【タイ⑧】東南アジアで唯一植民地化されなかった国タイ 世界遺産アユタヤ遺跡でタイと日本の関係性について学んだ話
2018年11月30日 アユタヤ遺跡に行ってきた。
ここはタイの首都バンコクから最も近い世界遺産で、連日多くの観光客が訪れる人気スポットでもある。
ここで出会ったガイドさんにより、タイと日本の共通点や両国の関係性について教えてもらった。アユタヤ遺跡の写真と共に、備忘録としてここに書き残しておきたいと思う。
アユタヤ遺跡 1日ツアーに参加
「アユタヤ遺跡に行こう!」そう決めたのは前日の午後であった。
最初は行く予定はなかったのだが、この3週間東南アジアに滞在していつの間にかタイという国がどんな国なのか興味を持つようになったため、足をのばしてみることにした。
個人でも自転車等で遺跡巡りは可能だと聞いたが、炎天下の中で周る自身がなかったこと、ガイドの説明を聞きたいこと、これらの理由から1日ツアーの利用を選択することに。
ツアーはカオサンロードにある旅行会社サワディーアンコールツアーに直接行き申し込んだ。エレファントライド付きや水上マーケットに合わせていくプランなどオプションがついたものもあったが、私はシンプルにアユタヤ観光だけのものにした。(アユタヤ遺跡1日ツアー 入場料込み550バーツ 約1900円 送迎・昼食付)
私が申し込みした際はたまたま日本人のスタッフが対応してくださったお陰で、スムーズに申し込むことができた。時間帯によって日本人スタッフがいる時といない時があるようなので、どうしても日本語の対応を希望したい場合は事前に電話やメールなどで問い合わせてから行くとよいだろう。
ツアーガイドさんの説明は英語によるものであり、参加前は少し不安であった。しかし実際は聞き取りやすい易しい英語で、英語が得意ではない私でも7割方理解することができた。送迎・昼食付でこのツアー価格はお手頃なので、英語が理解できなかったとしても、十分に価値があると思う。
アユタヤ遺跡観光ガイドさん「タイと日本は似てる」
バンコクからバンに揺られること約1時間半、アユタヤ遺跡に到着。
アユタヤは1351年から1767年にビルマ軍(当時のミャンマー)に破壊されるまでの417年間、王朝の都としてタイの中心であった場所。つまり古都。日本で例えると京都や奈良、鎌倉のような場所。
送迎車から降りたところで、ツアーがスタートした。ガイドさんが丁寧にその時代背景や、遺跡の詳細について説明してくれた。それだけではなく各ポイントごとにしっかり自由時間を取ってくれた。
しかしながらその日は気温32度超え。敷地内は日陰の部分が少なくかなり暑い。集合時間まで時間があったので、日陰の休憩所で飲み物を飲みながら涼んでいると、ガイドさんがそこにやってきた。
「どこ出身?」と聞かれたので「Japan」と答えると私日本が好き!と言ってくれるガイドさん。
「知ってる?アユタヤには日本人町があったのよ。今日のコースには含まれていないからいけないけれど、昔ここのアユタヤにはたくさんの日本人が住んでいた。」
アユタヤ王朝の時代に日本人が既にタイに住んでいたなんて全然知らなかった。その後ガイドさんはこう続けた。
「タイと日本は似てると思わない?タイは東南アジアで唯一ヨーロッパの植民地にならなかった。日本もどこかの国の植民地になったことはないでしょ?そして日本は第二次世界大戦の時、他の東南アジアの国の殆どを支配した。だけどタイだけ日本の植民地にならなかった。日本とタイはとても仲良しな国。」
これまた初耳の情報である。私はこれまで東ティモール以外の東南アジア諸国は全て訪れた経験があるが、どこの国もヨーロッパの支配を受けた歴史があった。でもタイがどこかに支配されていたという話は聞いたことがない。
もちろん日本だってヨーロッパの支配は受けた歴史はない。しかしながら第二次世界大戦後はアメリカの指示によっていろいろと動かなければいけないことが増えたし、沖縄も一時的に統治された。アメリカ側に有利な法律や規定も数多く通っているため、完全に支配されていないとはいいきれないのが事実。でもガイドさんの言う通り、どこかの国の植民地になった歴史はない。日本は現存する最古の国だ。
なるほど、面白い。このガイドさんが教えてくれたこの件に興味を持ち、タイについて調べてみることにした。
*ワット・ロカヤ・スターラーム。アユタヤ遺跡に存在する寝姿勢の仏陀。バンコクの寺院でも同じような姿勢のものがあった。ゆる~いタイらしさがこの像からも感じとれる。
東南アジア諸国 欧米・日本から支配を受けた国々のまとめ
以下は東南アジアの11か国の建国年、欧米・日本から支配された歴史についてまとめたものである。
建国年 | 欧米からの支配 | 日本からの支配 | |
タイ | 1238年 | × | × |
ベトナム | 1945年 | フランス | 〇 |
インドネシア | 1945年 | オランダ | 〇 |
フィリピン | 1946年 | スペイン・アメリカ | 〇 |
ミャンマー | 1948年 | イギリス | 〇 |
ラオス | 1949年 | フランス | 〇 |
カンボジア | 1953年 | フランス | 〇 |
マレーシア | 1963年 | イギリス | 〇 |
ブルネイ | 1984年 | オランダ・イギリス | 〇 |
東ティモール | 2002年 | ボルトガル・オランダ | 〇 |
皆さんお気付きだろうか。タイだけ明らかに他の国と違うということに。
第二次世界大戦中、たった数年ではあるものの日本は殆どの東南アジア諸国を支配した歴史がある。しかしタイだけその支配を免れた。そして欧米の支配からもだ。
タイは東南アジアの中心部に位置していて、多数の国に接しており、地理的にも攻め入れやすい場所だろう。しかしながら独立を保ち続けた。建国年も他の国々より700年以上も前である。
やはり想像以上にしたたかな国である。何故タイだけ侵略されなかったのだろう…。
色々なサイトを読み進めていく内にある1つのことが分かった。
*アユタヤ遺跡の写真 ビルマ軍の攻撃により像の首より上は破壊されたとガイドさんが説明してくれた。この時のビルマ(ミャンマー)は歴史的に見ても最盛期でかなり強かったそう
タイが独立を保ち続けられた理由は外交上手だったから
タイが欧米諸国や日本から支配を免れた理由。それは戦って勝った結果ではないし、軍事力・国力が特別強かったわけでもない。
とにかく素晴らしく巧みな外交を展開したからだそうなのだ。
第二次世界大戦中、タイは元々国交が深い日本と手を組み、一緒に戦っていた。
しかしながらタイのあっぱれなところは、一方でヨーロッパ諸国(連合軍)とも国交を保ち続け、二重外交を実施したのだという。結果、敗戦国とはみなされず降伏や占領を免れたそうなのだ。
またタイは地理的に攻め入れやすいと記したが、フランスとイギリスの緩衝地帯として機能していたという話もある。なぜなら東はフランスに支配されているベトナム、西はイギリスに支配されているミャンマーがあった。
世界には緩衝地帯として機能している場所がそれなりにあることをこの1年世界を旅して来た中で感じた。タイもまさにその働きを担っていたとすると、この結果にも頷ける。タイ政府は当時強国であったイギリスやフランスに積極的な外交を行い、国を守ったのである。タイ王室は今もなお国民からとても慕われており、支持率もかなり高いという。それは独立を保ち続けたという歴史的な理由も大きいらしい。
この一件からタイ人は「なるべく衝突を避け、怒らないこと」を小さい頃から教わるということを思いだした。まさにその姿勢が中立や平和を重んじるタイの外交にも現れているのではなかろうか。
*アユタヤは1つの源流河川、2つの支流河川に囲まれた中洲に位置している。敵からの防御を考えて中心部の回り掘ったらしい。この運河を利用し貿易や防衛を行い、アユタヤは発展していったという。
タイと日本の深い友好関係 タイと日本は仲良し!?
「アユタヤ遺跡には日本人町があった」「そしてタイと日本は仲良しだ」とガイドさんが言っていた。どうやらタイと日本の国交は600年以上続いており、今も尚お良好な関係を築いているそうなのだ。
特に驚いたのは外務省のタイのページだ。”いかに日本とタイが仲良しか”が長文で書かれており、なんだか熱い想いが伝わってくる。インドネシアやブルネイなども親日国の1つだと言われているが、タイのページと比較するとさらっとしているように感じてしまう。これらの国のスタイルがむしろ普通で、タイがイレギュラーなだけなんだけど…。
またこんなサイトも見つけた⇒日タイ修好130周年ウェブサイト 日露修好サイトや日本ポルトガル修好サイトなどは見かけたが、東南アジア内で修好サイトがあるのは日タイだけだった。
考えてみれば、日本国内でのタイ人気は根強い。タイ料理屋やタイ古式マッサージ店もみかけるし、大規模なタイフェスティバルも毎年開かれている。日本を代表するアイドルグループAKB48もタイに進出しBNK48というグループができたり、ジャニーズも以前タイ人と期間限定ユニットを組んでいたりということもあった。タイに行ったことがあるという人だって身の回りに結構いる。
これまで特別意識したことはなかったが”タイ”の存在は意外と身近にある。それはタイが魅力的な国であることがおそらく1番の理由。でもきっと日本とタイが長年友好関係を保持し続けてきたことも影響してのことなのだろう。
「日本はフィリピンを支配した時、ひどいことをした。もちろん良いこともしてくれたし、過去のことなのは分かってる。でも僕は日本が大好きだけど、家族に反対されるだろうからきっと日本では働けない」ヨーロッパで知り合ったフィリピン人にこう言われたことがあった。
支配された側の国民に負の感情が生まれ、それが受け継がれていく。この世界旅行中、様々な場所で実感した。出会ったポーランド人やウクライナ人の中にはロシアを良く思っていない人々がたくさんいたし、ヨルダン人やパレスチナ人の中にはイスラエルを目の敵にしている人もいた。他にも色々。
もちろん個人差や地域差はある。数年前ブルネイに訪れた時は「日本はブルネイを支配していた時にこの国を発展させてくれた。それにとても感謝している」ということを現地人に言われた。インドネシア人にも似たようなことを言われた経験がある。でも、残念ながら日本が他国にひどいことをしてしまった歴史は確かに存在する。
そう考えると、お互い支配したりされたりした歴史がないタイと日本は、ある意味対等な関係でいられるのかもしれない。
*ワット・マハタート内にある戦争により頭を切り落とされた仏像。しかし長い年月をかけて菩提樹の木が持ち上げたとされている
まとめ
・タイは欧州や日本に植民地化されなかった東南アジア唯一の国
・タイは外交上手な国で日本の友好関係も深い
もしもアユタヤ遺跡に来るという選択をしなかったら、このガイドさんに出会わなかったら、おそらく気付けなかったと思う。ここに来れて本当に良かった。ガイドさんに感謝の気持ちでいっぱいである。
その国にしかない珍しいものを見たり体験したりすることも良いが、国の歴史や日本との関係性を知るとまた違った視点で楽しめる。それを今回の一件で学ぶことができた。
国を理解することは難しい。現に生まれ育った日本のことでさえ分からないことは沢山あるし、どんな国なのかうまく説明できる自信があるかと問われれば首を縦にはふれない。
でも自分が行った国のことをほんの少しでも、1つでも良いから何かしら表現できるようになりたい。折角訪れたんだもの、面白い小話の1つや2つ出来る様になっておきたいのだ。
そして日本のことももっとよく勉強して理解を深め、何か聞かれたら上手に答えられるようになりたい。そう思っている。
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